2022年4月より聖契神学校の授業形態と時間割が変わります

  1. Zoomオンライン(双方向ライブ)+スクーリング(対面登校日)が基本の形態となります。メールが使用できるインターネット環境と、パソコンやタブレット端末などの機器を各自でご準備ください。
  2. 全国どこからでも受講出来ますが、スクーリングがあることをご了承ください。やむを得ず欠席した場合でも、限度内であれば単位取得可能です。
  3. 2022年4月~2023年3月は移行/試行期間で、一部の科目(お問い合わせください)がスクーリングを実施し、それ以外はZoomオンラインのみとなります。
  4. スクーリングは1 科目20回授業で2~4回です。
  5. カリキュラムと時間割は、別紙「2022年度カリキュラム」を参照してください。

2022年4月からの授業形態について(詳細)

聖契神学校校長 関野祐二

聖契神学校は、新型コロナウイルス感染防止のため、2020年4月より全面Zoomオンライン授業を継続してまいりましたが、2022年4月より「Zoomオンライン+スクーリング」の形態で年間の試行/移行期間に入り、検討を重ねた上で2023年度より本格運用する方向性を出しました。その経緯と詳細を以下にご説明いたします。

●コロナ前までの経緯

2022年で創立70周年を迎える、1952年10月開校の聖契神学校は、1973年4月の拡大神学教育理論に基づく学制変更で、それまでの全寮制による通常の学年制から「基礎科」「専門科」の通学主体・昼夜間交替単位制に切り替え、「働きながら学べる神学校」との看板を掲げる第一歩を踏み出しました。これにより、仕事を持ちながらでも信徒奉仕者/信徒伝道者や教職者を養成可能な、間口の広い都心の超教派神学校としてコンセプトを明確にした結果、諸教会の理解を得て多くの学生が与えられるようになり、現在に至っております。昼間授業だけの全寮制が常識だった当時の神学校としては画期的な改革だったため、批判も多かったことを伝え聞きましたが、時代を数十年先取りしたこの機構改革によって、生活スタイルの多様な献身者を受け入れることが可能となり、今日ますます時代の要請に応えたシステムとして用いられてきていると受け止めています。全寮制でないゆえ懸念される人格的訓練の不足は、教師と在校生の垣根をはずし、献身者同士として同じ目線で学び合うことを心がけることにより、ある程度は補われてきました。

多少個人的なことになりますが、2003年4月に前任の伊藤淑美校長から現職を引き継いだ際に託されたのは、授業のレベルアップでした。言うまでもなく、神学校の真価は最終的には授業内容とその充実度で測られるわけですが、本校のように昼夜間単位制ゆえ全在校生が一堂に会したプログラムを持ちにくい神学校においては、授業ごとに多様な献身者が出会い、学びを共にしますから、とりわけ授業の質の向上が求められます。「働きながら学べる」との宣伝文句が、授業を気軽に受けられ簡単に卒業出来ると勘違いされたり、現場で十分な働きを担えない卒業生を量産する結果を生まぬよう、教師陣が一体となって授業の充実を心がけてまいりました。「働きながら学べるが授業と課題はたいへん」ということになるのですが、おそらくこれはここ20年間の卒業生や在校生の実感だと思いますし、教える側としても、仕事や家族を抱えながら全力で学ぶ在校生をリスペクトし、応援して来たつもりです。

 以上のような約50年の歩みを経て思わぬ形で訪れたのが、コロナ禍による授業の全面オンライン化でした。

●全面オンライン授業の2年間

2020年2月より新型コロナウイルスの世界的感染拡大が始まり、都心にある通学主体の本校は真っ先に緊急の対応を迫られて、臨時の教師会を重ねる中、双方向のオンライン授業が可能なビデオ会議アプリZoomの採用を決定し、4月2日開始の前期授業を3週間遅らせてオンライン対応の授業準備をし、4月27日(月)より全科目Zoomオンライン授業を開始しました。教師はもちろん、在校生の側も緊急対応には苦慮しましたが、家族や教会の協力もあり、感謝なことに70名近い在校生と15名の教師全員がスタート時からオンライン授業に対応出来たのでした。2020年度は6月と11月の2回、在校生と教師を対象に、オンライン授業に関するアンケートを実施し、問題点を洗い出して改善に努めるとともに、それまで年2回だった教師会を毎月行い、オンライン授業の中で困っていることや技術的問題などを共有して、情報交換を続けました。

コロナ感染が終息しないままオンライン授業の延長を繰り返し、緊急事態宣言発令中は神学校の建物も閉鎖して図書室の予約使用に限定し、宣言解除後もその対応を継続して今日に至っております。途中、演習主体のクラスで登校日の実施も計画したのですが、感染状況の悪化で実現には至らず、また仕事を持つ方々の予定が立たなくなることも考慮して、一時的に感染状況が多少改善しても対面には戻さず、オンラインのみの授業を続けてまいりました。

●オンライン授業に対する意識の変化

オンライン開始当初はまさかこれほどコロナ感染が長期化するとは思いもよらず、あくまで一時しのぎの手段として、早く通常の対面授業に戻すことばかり考えていたのですが、コロナ長期化により世の中のオンライン化テレワーク化が進み、キリスト教界も少なからぬ影響を受けて来たことはご承知の通りです。コロナ禍が高止まり状態の現在(2022年2月中旬)、以前のような全面対面の通常礼拝をささげる教会はむしろ少なく、人数制限や複数礼拝などの工夫に加え、何らかのオンライン方式を取り入れた礼拝を持つ教会も多くなりました。会議や集会も今やオンラインが主流です。その検証は現在進行中ですから、ここで礼拝や集会のオンライン化是非を問うことはいたしませんが、神学校でオンライン授業を続けながら、生身の人的交流が希薄となるデメリットや制約もある一方、聖契神学校の特性を生かしたオンラインならではのメリットや、コロナ前までは思いもよらなかった可能性にも目が開かれてきたのは事実です。そこで、教師会による話し合いの蓄積、複数回のアンケート結果、国内外他校によるオンライン授業取り組みの調査、神学校運営スタッフによる継続的検討を踏まえ、聖契神学校運営委員会は2021年9月の理事会に「2022年度以降の聖契神学校の方向性素案」を提出し、基本的了承を得た上で、12月の理事会にて、2022年度の事業計画および予算とともに、今後の方向性を集約しました。詳細は後述しますが、短くまとめるなら、コロナ禍終息の有無に関わりなく、「2022年4月以降、授業形態はZoomオンライン+スクーリング(登校日)を基本とする」となります。

●全面オンライン授業2年間の評価

Zoomオンライン授業開始当初は、在校生はもとより教師の授業対応が課題でしたが、慣れるにつれてオンライン対応への最適化が進み、2020年の夏頃にはすべての授業がほぼ軌道に乗りました。授業支援アプリGoogleクラスルームによる授業一括管理、Googleフォームによるオンラインのクイズや試験、Zoomのブレイクアウトルーム機能やチャット機能を活用した質疑応答やディスカッション、Zoomの録画機能を用いた授業動画のYouTube限定公開による復習や欠席者へのサービスなど、オンラインならではの技術を積極的に活用しているクラスもあります。

チャペルタイムは当初あきらめていたのですが、アンケート結果を踏まえ、2021年1月より時間を1 5分に短縮しオンラインで開始しました。オンラインではタイムラグが発生するため共に讃美が出来ないのは残念ですが、どこからでも入室可能なため、クラス受講者の枠を超えて在校生や教師が出席し、たいせつな交わりと祈りの場になっています。

オンライン授業の全体的傾向として、まずメリットは、通学時間と交通費がかからず、場合によっては職場や出先からでも授業に参加でき、介護や子育てなどと並行して自宅から学べること、遠隔地でも遜色なく学べること、録画動画の活用で復習や欠席に対応出来ること、文書やパワポ資料や動画の画面共有が出来、資料がオンラインで共有されるなら、提出レポートも含めて紙媒体から解放されること、質問や意見交換やディスカッションがオンライン上で可能なことなどが挙げられ、授業の質そのものはオンラインでも概ね遜色なく維持されていると言えるでしょう。

一方オンラインのデメリットは、長時間パソコン画面に集中することによる疲労と運動不足、IT格差、パソコンやネット環境のトラブル対応、クラスで個人的な雑談やちょっとした会話がしにくいこと、図書室が使えず資料集めが難しいこと、演習主体の授業の対応、個室環境が確保出来ない場合に家族へ負担がかかること、なによりも肌感覚の交わりが出来ないことでしょうか。

両者を勘案してまとめるなら、本校の特性をも加味し、学び易さの点でオンラインのメリットが大きく、授業の質も概ね担保されているという結論です。

●3回目のアンケートと方向性の模索

2021年8月下旬~9月上旬、コロナ終息後の授業形態を見据えた3回目のアンケートを在校生と教師対象に実施しました。その結果、在校生回答者でオンライン授業に不満と答えた人はゼロで、学習の質の低下を感じている人も少数でした。これは教師と学生双方の努力と工夫の賜物でもありますが、入学後一度も対面授業を経験していない、つまり対面とオンラインを比較しようのない在校生が回答者の28%いたことも付記しておきます。Zoomオンライン授業を継続し、必要に応じてスクーリング(対面の登校日)を行う形態の希望者が半数を占めました。オンラインと対面のハイブリッド授業希望者も一定数いたのですが、それが可能になった場合どちらに参加するか問うたところ、オンライン選択が対面の二倍以上で、未確定の人も多く、手間と機材の費用をかけハイブリッド授業が実現しても、いざ蓋を開けてみたら対面の出席者数の割合が低くなる可能性がかなりあることもわかりました。それだけ、オンライン形式の学びに物理的なメリットを感じておられる方が多いということでしょう。全面的に対面へ戻すことを希望する方はわずかでしたから、何らかの形でオンラインを取り入れる授業の希望者が大半という結果が出ました。あとは、オンラインのデメリットをいかに減らし、不足を補うかによると言えましょう。

なお、2021年8月下旬から9月にかけて、事務スタッフ会、教師会、理事会の場をお借りしてのハイブリッド授業(Zoomオンラインと対面授業の併用)実証実験を3回行いました。技術的には十分可能ですが、クラスに一人はIT担当スタッフを常駐させる必要があり、教室に入る定員が限られるため大人数クラスが重なった場合の対応が難しく、通常クラスでの実行には課題があることがわかりました。

●遠隔地からの学びに門戸を開く

これまでの神学校ニュースでもお伝えして来ましたが、現在、九州や山陰、中部地方日本海側、関東北部在住の在校生が数名います。彼らは全面オンライン授業だからこそ学びが継続出来ているわけで、授業の画面上ではそれこそキャンパス内の寮生と全く同じ近さで学んでいます。これは九州北部出身の教師からZoom教師会で直接聞いた話ですが、神学校のない地域の教会は、献身者が起こされて遠方の神学校へ送り出すと戻って来ないケースを経験した悩みを抱えているそうで、教会の中心メンバーを送り出せば、教会活動に支障をきたす場合もあるでしょう。地域教会に仕えつつ、居ながらにして教職者養成レベルの学びをオンラインで受けられるなら、地域教会にとってもメリットが大きく、教会と神学校の協力による教職者の養成が可能となります。これは深刻な働き人不足に悩まされている海外の日本人教会にとっても同じで、信徒説教者や教職を目指す献身者をオンラインで日本から教育出来るなら、現地教会の祝福となるでしょうし、すでにそうした要望が寄せられています。

仕事を続けながら教会に仕える信徒リーダーやテントメーカーの養成は、牧師の高齢化や教会の経済状況の悪化に伴い、益々急務となっています。これまでも本校はそうした方々が学びやすいようなシステムを取って来たわけですが、今までは首都圏在住でも物理的に通学が難しかった方々が、授業のオンライン化によって学びの機会を得られるなら、教会の将来にとって大きな力となりましょう。

もうひとつ、現場で奮闘する牧師の継続教育にも、これまで以上の可能性が開けてきます。なかなか留守には出来ない牧会現場に居ながらにして最新の神学を学んだり、牧会スキルをブラッシュアップしたり、教師や他の学生と交流することが出来るのは大きなメリットでしょう。これまでにも単発のオンラインセミナーには多くの参加者がありましたが、オンライン授業への参加にも期待が寄せられており、事実、現場の牧師が複数履修しております。卒業生と神学校のパイプが太くなるのは、双方にとって祝福につながるでしょう。

●今、聖契神学校に求められていること

50年前から、昼夜間交替の単位制、信徒奉仕者から教職者養成まで、神学的にも幅広く対応して来た超教派の福音派神学校ならではの特性を生かす、遠隔地の方にも学びやすいシステム作りを進めたいと思います。それには、双方向Zoomオンラインを主体とし、スクーリングを組み込んだカリキュラムの一本化が望ましいと思われます。老朽化した校舎の建て替えは長年の懸案でしたが、この方向性が定まるなら現在と同等の大きな建物はそれほど必要なく、思い切ったスリム化と、オンライン&スクーリングに特化した設備が求められてくるかもしれません。コロナ禍以前より聖契神学校のオンライン教育コース展開への可能性とブランディング、首都圏以外への支援者拡大を話し合って来たわけですが、図らずもコロナ禍によって強制的にその方向へと押し出され、この2年間発想の転換を迫られて来たように思います。

もちろんこの方向性ですべてが万々歳というわけではなく、解決すべき課題や不安要素もあります。教育学的にオンライン化が対面授業と同等と見做し得るか、今後も裏付け調査を続ける必要がありましょう。ただ時流に乗るだけの改革であってはなりませんし、それでは諸教会の理解が得られないでしょう。しかし、「対面授業の時には教室へ行って誰とも話さず、授業が終わったらそのまま帰ることもあった。でも今はオンライン授業でクラスメートの顔がすべて平等に並び、ブレイクアウトルームではずっと深いディスカッションが出来ている。オンラインだから人格的な深い交わりが持てないとは必ずしも言えない」との声も届けられました。要は、どちらが良くてどちらがダメと二極化することなく、良い部分を柔軟に取り入れた、形式ではなく文字通りの「ハイブリッド」を目指すべきなのでしょう。ですからスクーリングは、オンラインとの自由選択ではなく授業の一部として設定し、スクーリング参加が困難だからオンラインで代替するという発想を一旦脇へ置き、対面参加を重視したいと思います。

●まとめ~2022年度からの授業形態~

授業は、Zoomオンライン+スクーリング(登校して対面授業。20回授業の内、2~4回)で行う方向とし、2022年度(2022年4月~2023年3月)は移行期間として、事務スタッフ教師(関野校長、山﨑ランサム師、吉川師)の担当科目から段階的に導入します。また、それ以外の教師がスクーリング導入を希望する科目は2022年度から実施します。具体的なスクーリングの持ち方については別途検討していますが、コロナ禍の状況や履修人数により柔軟に対応します。また、授業時間のスケジュールはこれまでオンライン授業に関し、チャペルタイム以外は教師に任せていましたが、4月からは全科目統一します。具体的には、昼授業が8時55分~11時50分(途中10時5分~25分チャペル)、夜授業が18時40分~21 時30分(途中19時55分~20時15分チャペル)です。

可能な限り知恵を出し合い、様々な角度から検討し、教師や在校生の意見を聞き、プロセスを踏んで議論を積み上げて来ましたけれども、それでもいざ一歩を踏み出すのには覚悟が要ります。50年前にあの学制改革を行った大山武俊先生の知恵と英断には到底及びませんが、その大胆さと勇気にはあやかりたいです。どうぞ、献身者を送り出す諸教会の理解と支援が得られ、聖契神学校が広く日本の福音派の祝福と成長に寄与する教育機関として、これからも益々用いられますように。主よ、どうか荒野に道を、荒れ地に川を設けてください(イザヤ43・19)。